LCGT f2f コラボレーションミーティング 議事録
2010年 6月 15日(火曜) 10:30-17:30
2010年 6月 16日(水曜)  9:00-16:00

決定事項:
  - 「LCGT では観測帯域・干渉計方式として帯域可変方式 (VRSE-D) を
    採用する」という観測帯域作業部会の提案は 2010年 3月 1日の
    コラボレーションミーティングで了承されていたが,今回の f2f
    ミーティングで再度決定事項として承認する.
  - LCGT データ共有検討特別作業班の第一次答申案を承認する。基本方針は、
    「LCGT も国際重力は観測網としてデータ共有/解析を行い、重力波の
    世界初検出に活躍することをめざす。」
    である。また、LCGT予算が認められ次第、国際共同観測網構築を目指す
    MOU の general partを速やかに締結する。

アクションアイテム:
  - 干渉計全体のデザインを決める少人数のグループを作り,そこに
    ある程度の決定権限をもたせてはどうかという提案を受け,
    マネジメント部は,そのグループの人選を含めて,組織図の
    変更を検討する.

1日目出席者:
 中谷・梶田・黒田・大橋・三代木・内山・宮川・大石・斎藤(陽)・関口・
 斎藤(芳)・鈴木(敏)・森脇・大前・小倉・高山・渡部・
 坪野・麻生・穀山・岡田(健)・正田・宗宮・植田・武者・
 川村・高橋(竜)・辰巳・阿久津・上田・端山・我妻・西田・森・江尻・陳・
 安東・田越・神田・岡田(雄)

1日目議事:
- 全体報告 (黒田)
  観測帯域の BRSE から VRSE-D への変更と,SPI 廃止について,
  決定はしていたが周知が足りなかったので,決定したことを再確認した.
- レーザー (大前)
  Q.「ファイバーレーザーに関して,"将来的には" という話がいくつか
  あったが,それらは LCGT で使う予定?」
  A.「現在のデザインドキュメントのものがデフォルト案であって,
  "将来的" の話はオプション.」
- 入射光学系 (森脇)
  「MC 逆まわり光の影響を定量的に見積もってほしい」
- 鏡 (上田)
  鏡のグループを立ち上げたい.テスト用の鏡を作るには経費が必要で,
  現状の予算状況では本番の基材にコーティングをかけて LCGT 3km 腕に
  いきなり入れるしかない.
- 干渉計制御 (麻生)
  Folding はジオメトリ的にできそう.
  Q.「パラメータの良し悪しは何で判断?」
  A.「干渉計の SN比で.」
- デジタル (宮川)
  Q.「チャンネルのリストを見てみたい.」
  A.「まだラフな見積りで網羅できていないが,ICD 参照してほしい.」
- 干渉計補助 (三代木)
  Q.「リスク要因は?」
  A.「LIGO-TCS 導入が一番大きなリスク要因.」
- 真空 (斎藤)
  「必要なチェンバーの数が早く決まるよう他の部会に圧力を.」
- クライオスタット・冷凍機・サファイア懸架構造 (鈴木)
  新たな問題として 300K超高真空対応クライオスタットを考える必要あり.
  サファイアファイバも依然,難問が残っている.
- 防振 (高橋)
  真空チェンバー,ドキュメントの記載より高さがやや低くなる変更あり.
  「モデリング対象が type A から C まであって,0度 と 45度入射も
  考えると種類が多すぎてマンパワーが足りない.種類を減らす必要が
  あるのでは?」
- 施設 (大橋)
  一時期 2.7km 案もあった腕長も 3.0km に戻っている.
- データ解析 (神田)
  解析センターのインフラ規模見積り中.
  解析ツールとタスクの表を作ってホワイトペーパーに載せる予定.
- LCGT from the Viewpoint of System Engineering (中谷)
  システムエンジニアリングで (SE) でよく言われる 23種のドキュメントを
  すべて作るのは LCGT では現実的でない.
  LCGT Design Document と Interface/Configuration Control Document (ICD)
  の 2種類に集約したい.
  別の人が Environmnet Pla と Safety Engineering Program Plan を
  作る必要がやがて出てくるであろう.
  マネジメントサイドで SEMP (System Engineering Master Plan) を作る
  必要もある.
  Design Review をやることも大事.そのとき,決定事項を理由を添えて
  ドキュメントにしておくことが役に立つ.
  Q.「LCGT に即した具体的なアドバイスは?」
  A.「個人の研究としておもしろいからそちらをやる,という考えを
    やめて LCGT プロジェクト全体を見渡す立場にたつ必要がある.」
  Q.「レビューは誰にしてもらうべき?」
  A.「衛星の例でいうと JAXA の別のプロジェクトの人,
  電源など専門に特化した企業の人,引退後の研究者など.」
  Q.「ICD 作成の目的は?」
  A.「各要素がどのグループを受け持つかをはっきりさせるため,
  サブグループ間の不整合をチェックするため,の二つ.」
- LCGT 体制の問題点 (宮川)
  LCGT の会議では science の話題を多くして,closed な話題を最小限にして
  学生の参加がもっとふえるようにすべき.
  コーディネータ会議からの情報が少ない.
  全体デザインを決める少人数のグループを作り,ある程度決定権限を
  与えて各サブシステムを仕切る構成を提案したい.
  Q.「サブシステムに決定権を与えるという別の構成も可能では?」
  A.「明日議論の続きを.」

2日目出席者:
 中谷・梶田・黒田・大橋・三代木・内山・宮川・斎藤(陽)・榊原・関口・
 鈴木(敏)・森脇・大前・小倉・高山・渡部・磯部・上原・安田・
 麻生・穀山・岡田(健)・正田・宗宮・植田・武者・
 川村・高橋(竜)・辰巳・阿久津・端山・我妻・西田・森・江尻・鈴木(理)・陳・
 安東・田越・神田・岡田(雄)

2日目議事:
- RSE ロードマップ特別作業部会 (安東)
  VRSE-B と VRSE-D の復習.
  Q.「両者の切り替えには何日かかる?」
  A.「理想的には一瞬で切り替わるが,切り替えに伴って干渉計の微調整を
  する必要があり,なんとも言えない.調整の自動化により短くなる.」
  Q.「-D 用にオフセットを加えると雑音混入経路が増える可能性がある」
  A.「-B と -D の変更で鏡の反射率や真空槽の位置は変わらない,という
  認識をもっておいて欲しい」
  ロードマップの説明:
  RSE感度向上確認のためのプロトタイプは作らず,本体建設・調整に
  注力したい.
  神岡現地の解析棟に設けられる光学実験室で試験測定ができるように
  準備をしておきたい.
  「解析棟にそれほど大きな実験スペースは作れないし,時期的に遅いかも
  しれない」
  「マンパワーの補充と,解析棟とは別に実験棟を作るべきという話を
  忘れず検討したい」
- データ共有検討特別作業班 (神田)
  本作業班の発足経緯と検討の経過報告.
  答案骨子:
    - 1: 重力波イベント探索の信頼性を確保し、決定する物理量の精度や統計を
         良くするために、LCGT も LIGO(LSC), Virgo らとデータ共有を行い、
         世界的な検出器ネットワークでの解析が必要である。
    - 2: 重力波イベントの初検出は、複数台の検出器で確立されると思われる。
         その際、LCGT が加わらなければならない。
  の 2点については意見が一致.以下の 2点:
    - 3: 重力波の探索解析や重力波以外の観測との共同解析について、LCGT
         単独での解析/独自の協定が制限されることについての可否
    - 4: LCGT データを国際共有に提供する時期
  については委員の間で意見の不一致があったが,今回の一次答申では,
  現時点で無理に一つの意見に集約せずに、全体の方針や今後の状況を鑑て
  オプションとしての選択肢を残すべきと判断した。
  「LIGO-VIRGO の MOU は 2007Q1 発効だが,1.5年後または VIRGO のデータの
  質が LIGO に比肩する時期の早い方からデータ共有を始めるという内容.
  これに準じる内容で MOU を作ることになるのではないか」
  「LIGO 側では LCGT のデータ提供を期待しているからこそ技術を移転して
  くれる面もあるので配慮がいる」
  「例えば今進んでいる LIGO のデジタル制御の技術移転の協定では,
  見返りとしてデータを提供するという文言はないので,一応独立している」
  A.「LCGT の予算がつきしだい,すみやかにアクションを起こすと宣言して
  回答する.」
- TAMA (辰巳)
  TAMA RSE の紹介.
  LCGT への寄与として考えると,できないことは二つ:
   - radiation pressure 関連の実験はできない
   - 低周波での感度検証はできない.
  LCGT の制御作業部会の検討を踏まえて,TAMA RSE の内容を変える可能性あり.
- CLIO (三代木)
  低温化の歴史を主に CLIO の報告.
  200g の鏡で SQL を見る話題 (MQM) を紹介.
  Q.「CLIO で予定している LCGT 要素技術の確認項目は?」
  A.「ヒートリンクの開発.最後は LCGT実機での確認が欠かせない.」
  A.「サスペンション熱雑音,特に振り子 Q値の確認.」
  Q.「MQM 実験はもっと小さい鏡を使うと確実に SQL が見えるのでは?」
  A.「腕長 100m ではこれ以上小さくするのは厳しい.」
- 神岡IP実験とSASプロトタイプ (高橋)
  0.1Hz 以下で低周波でのエクセス雑音が傾斜由来でないことを確認.風の
  影響かと思われたので IP上部を密閉する改良を行ったが,雑音レベルに
  変化はなく,風の影響でもなさそう.
  0.2Hz 以下で SAS の性能が出ないという可能性が排除できない.
  Q.「LCGT で SAS の性能が出ないとなると,どう対応する?」
  A.「Maragin のディスロケーション説については別実験で否定するのが得策か.
  Virgo では原因を分析して制御で抑え込むことに成功しているので
  同じような方法で対処する.」
- ヒートリンクの防振性能 (麻生)
  ヒートリンクの振動伝達の解析,ばねモデルから進んだモデルの紹介.
  Comsol Multiphysics を使用した有限要素解析.
  Q.「現在の SASデザインを変える必要はないと考えてよい?」
  A.「SASデザインがまだ変わる可能性があると考えていて,変更に対応して
  防振比の確認ができる.」
- LCGT and QND experiment at NAOJ (森)
  振り子 Q が低いという問題に取り組み中.
  「光の輻射圧雑音の確認という意味で LCGT プロジェクトにとって大事な実験.」
  「バランスホモダインと DC リードアウトのテストという意味でも重要.」
  Q.「FPの相手の鏡は吊ってある?」
  A.「現在はブレッドボード上に固定だが,吊るす予定.」
- シリコン鏡 (麻生)
  低温マスではサスペンションワイヤーを太くしなければならないため
  サスペンション熱雑音が小さくならず,LCGT の感度が常温の aLIGO に
  くらべてあまりよくなっていない.
  Si は 1.55nm レーザーの吸収が非常に少ない.
  サスペンションワイヤーを Si でリボン状にできればバイオリンモードの
  周波数を観測帯域から上側に離すことができる.
  Q.「1550nm を使うことの心配点は?」
  A.「低損失は確実にできているが,ハイパワー対応はわからない部分がある.
  ビーム径は拡がるので対応が必要.」
- ぎりぎりLCGTから完璧LCGTまで (宗宮)
  ハイフィネス共振器で detune すると非線形領域になるので
  コンバージョン雑音で汚れるから,などの理由で LIGO の人々が
  LCGT の RSE の構成を危険視している.
  しかし,LCGT では熱雑音が低くて小さい detune で効果が大きいので,
  パラメータをうまく選ぶことで懸念要因は回避できそう.
  RSE失敗,サファイア作成失敗の際の LCGT 実現案として半低温干渉計の
  検討が有用と思われる.
- CRC将来計画シンポジウムのお知らせ (神田)
  2010年 9月 16日の上記シンポジウムで,LCGT プロジェクトが招待されている.
  将来計画をまとめた文書を作成する.重力波グループから聴講参加する
  など,協力をお願いしたい.
- 文書管理及び共有化の重要性 (宮川)
  LCGT Wiki (情報共有スペース) と JGWDoc (文書管理・検索サーバ)
  をうまく使い分けて活用して欲しい.
- 全体討論 (麻生)
  lcgt2008 ML での使用言語について議論があった.
  「日本語可読でない海外コラボレーターも増えてきたが,
  現在主に日本語で流通しているので,英語を主にすべきではないか」
  「英語のみにするとアクティビティーが下がると予想されるが,
  それを補うために日本語用 ML をパラレルに作ってもともとの ML の
  流通量が激減すると,海外コラボレーターに "LCGT が国内 closed に
  なった" という印象を与えよくない」
  「少なくともメールのタイトルは英語で書くのがよい」
  「議事録を英語併記にするのは大変なので,日本語議事録を Wiki にはり,
  アナウンスだけ日英で lcgt2008 に流すのでよかろう」
  昨日提案のあった,干渉計のデザイン実作業を監督する少人数グループ創設に
  ついて,各種意見が出た.
  「エグゼクティブにつく参謀役として少人数グループを設けるのは
   PM としてはありがたい」
  「中谷・梶田・黒田・大橋で,誰に頼むか,組織図的にどうするかを
  決めてアナウンスする」
- まとめ (梶田)
  共同研究者が一同に集まる会議の重要性が認識されたので
  今後も続けて行くべきとの発言があった.
  最先端研究基盤事業についての状況説明があった.
  また,今後のアジア・オセアニアの国際協力も進めて行く
  必要性が述べられた.

- 次回 f2f ミーティングは 2010年 9月の予定.