= サスペンション熱雑音と温度最適化 = === 議論の背景 === この議論は、以下のようにして始まった。 第2回帯域検討SWGで、私(宗宮)がバイオリンモードによる感度劣化を指摘。 この時点でBRSEで10%、DRSEで20%のSN低下という計算結果になった。 数日後、山元さんが、私の使っている式に含まれる近似が問題であることを 指摘。それに基づいて新しく計算すると感度は元から数%悪化する程度である ことが分かった。 {{attachment:LCGT_suspTN.png|alt text|width=400}} しかし、それでもまだサスペンション熱雑音が感度を部分的に制限していること が分かった(下図:左がBRSE、右がDRSE;縦軸はSN=10の到達距離(Mpc))。 {{attachment:howthinsuspshouldbe.png|alt text|width=250}} {{attachment:howthinsuspshouldbe_DRSE.png|alt text|width=250}} 現時点では1.8mmのファイバーを鏡片側ごと2本吊りする予定である。 BRSE、DRSEともにもう少し細いと感度がよくなることが分かる。 === 冷却能力 === LCGTの下段マスはファイバー経由で冷却されるので、ファイバー径が太く ないと冷却能力が落ちてしまう。径が1.8mmで長さが40cm、上段が10Kだと すると1Wの冷却能力をもっている。バルクの吸収が片道20ppm/cmとして、 コーティングの吸収が0.1ppmだとすると、フィネスが1550のとき合計700ppm の吸収が生じる。各腕への入射パワーが400W強だから、およそ0.3Wという ことで、安全ファクターが3である。コーティングの吸収が1ppmならばおよそ 0.7Wになる。 鈴木さんによると([[attachment:FiberData.pdf|データ参照]])、ファイバーの熱伝導率は2.5mm程度 より細くなると落ちていくことが分かっている。熱流量が熱伝導率×断面積÷長さ なので、合わせると径の3乗で落ちていくことになる。ちなみに、ファイバーを 長くすると熱雑音のフロアレベルは下がるが、熱流量が落ちてしまう。 細くするのも長くするのも制約が厳しくてなかなか難しい問題である。 === 内山さんの提案 === ここで内山さんから、下段の温度を20Kから少しだけ上げるのはどうかという 提案があった。↑の図を見ると、20-30Kの間で熱伝導率の強い温度依存性が 見受けられる。下段の温度を上げるかわりにファイバーを細くする、という 作戦である。 === 計算 === ファイバーの熱伝導率の温度依存性と総熱流量の式はLCGTドキュメントver2 の式(12.4)(12.5)に載っている。1Wの冷却能力を保つのに必要なファイバー 径は以下のようになる(横軸は温度(K)、縦軸は直径(m))。 {{attachment:fiberdiameter.png|alt text|width=250}} 上の図ではファイバー長は40cmだが、それも変えることができる。パラメタ を変えて、BRSEの場合の中性子連星への感度で比較すると以下のようになる。 {{attachment:SNvsFiber.png|alt text|width=400}} 残念ながら、温度を上げても20Kよりよくなることはないようである。 これはバルクの熱弾性雑音の温度依存性が強く出ているからである。 しかし、今回の計算で、ファイバーはもう少し短い方が感度は上がるという ことが分かった。懸架系的に可能なのだろうか。 == 補足 == 量子雑音を除き、20-200Hzに帯域を絞って積分してみたが、低温の方が よいという結果は変わらなかった。このことから、DRSEでも温度を上げる ことによる利得はないと結論付けてよいと考える。 {{attachment:noQN.png|alt text|width=400}} また、ビーム径を広げることもしてみたが、あまり違いは得られなかった。 20Kではコーティング熱雑音の方がバルク熱弾性雑音より大きいが、それ を多少下げても温度依存性には影響ないということである。ちなみに低温 のバルク熱弾性雑音はビーム径に依存しない。