Common Mode Servo Oscillation Issue
Common Mode Servoが発振している問題のまとめページ.
Contents
概要
2024/05の一連の測定から,Common Mode Servoの半分以上がMHzで発振していることがわかった.この問題への対処のため,測定結果・原因・対策などを以下にまとめる.
背景
2024/05/09の測定により,Gr PDH Y のサーボ(S1605813)から28MHzの信号が出ていることがわかった.
- 回路を持ち帰って調べたところ,同様の現象が再現できた.
2024/05/10の測定の測定から,Gr PDH Y の入力にIQ demodulatorの出力が繋がっていると出ることがわかった.ケーブルを疑いBNCを交換(1m → 2m)すると28MHzでのピークは消えた.
その後の持ち帰った回路試験により,悪いのはケーブルではなくサーボ自身であることがわかった.サーボの入力段のdifferential driverが発振しやすいAD829を使っているため,入力の一方がサーボのGNDに落ちているとそこで発振する.
2024/05/14の測定により,交換したGr PDH Yも発振しており,ケーブルの長さを変えたことで周波数がずれた(28MHz→19MHz)だけであったことがわかった.
- 坑内にインストールされた9台のサーボについて発振を調べたところ,9台中6台(Gr PDHX/Y, PLL X/Y, Summing node, CARM)が発振していることがわかった.
原因
詳細は霜出さんのレポートを参照.
発振の原因は,Common Mode Servoの初段のdifferential driverにある.帯域を広く取るためにAD829というオペアンプを使用しているが,このオペアンプは完全補償型ではなく発振しやすい.このため,differential driverの入力の一端がGNDに落ちていると発振してしまう.
KAGRAのCommon Mode Servoは基本的にはLIGOのデザインと大きな変更はないため,状況はLIGOにおいても同じはずである.しかし,LIGOでは(一部を除いて)Common Mode Servoの入力はdifferentialになっているためにこの問題は回避できていると思われる.一方,KAGRAではほとんどのCommon Mode Servoの入力がsingle endになっているため,入力の負極側がGNDに落ちている.入力信号のGNDとサーボのGNDがずれているならばおそらくこの問題は回避できるが,現状多くの回路はGNDが共通しているため,結果9台中6台(FIB X/YとIMC以外)が発振してしまっている.
(2024/05/16追記) その後の調査で,differentialの信号をBNCで入れても発振することがわかった.I/Q demodulatorのI/Q outをBNCの芯線を+signal,BNCのGND側を-signalにして入力した場合にも発振した.一方,single endで入れるにしても霜出さんのレポートのようにBNCのGND側がちゃんと回路のGNDに落ちていてシールドの機能を果たしていれば発振しない. Common Mode Servo同士の接続も確認した.ServoのSLOW OUT/FAST OUTのどちらでも,OUTを別のサーボのIN1/IN2に繋ぐと発振する.
(2024/05/31追記)
対策
回路室でのテストにより、フェライトコアをケーブルに巻くと28 MHzの発振が止まることが分かった。
5/29 klog 29677: Gr PDHやPLL、CARMやSumming nodeのケーブル周りにフェライトコアを実装した。ループアンテナで測定し、28 MHzの発振が止まっていることを確認した。
5/30 klog 29700: 28 MHzピークは消えたが、他にも多くのピークが観測されている。RFサイドバンドを生成するための発振器が原因かもしれないと考え、オフにして測定した。干渉計LSCで用いるサイドバンドを生成する5.6 MHzをオフにすると、最も目立っていた50 MHzピークとその他いくつかの小さなピークが消えた。これはf1の3倍波に相当する。17 MHz (f1)と90 MHz (f2の2倍波)も消えることを期待したが消えなかったため、原因は別にある。そもそもCMSから離れたところでもループアンテナは信号を拾ってしまうので、回路由来ではない可能性がある。干渉計制御のためにはこの発振器をオフにはできないため、対策を考える必要がある。
各ボード詳細
Gr PDH X/Y
現状
- どちらもLSC0 rackにインストールされている.
- 直前の回路はI/Q demodulatorであり,Front panelのImonをサーボに入力している.この入力はsingle endなので,発振する.
- I/Q demodulatorにはdifferential endの信号もあり,Rear panelのDsub9ピンから出ている.現状この出力はAA chassisに繋がってデジタルに流れている.
LIGOの状態
- LIGOではI/Q demodulatorの中身の構成がKAGRAと異なる.メインのdemodulator boardの後にBreakout boardがあり,そこでTNC出力でdifferential信号を出せるようにしている.これをCommon Mode Servoに繋ぐため,発振はおそらく起こらない.
対策
- I/Q demodulatorの信号をdifferentialにしてBNC(or 2pin LEMO)でサーボに入れるようにする?
klog
klog 29446: Gr PDH Yでの28MHzピークの発見
klog 29456: IN1に繋がるケーブルの交換でピークが消えた(ように見えた)
klog 29503: ループアンテナでサーボ周辺を測定.Gr PDH Xで28MHz, Gr PDH Yで19MHzの発振
klog 29568: ループアンテナでサーボの出力周辺を測定.Gr PDH X/Yのどちらも50MHzの信号がある
PLL X/Y
現状
- どちらもALS1 rackにインストールされている.
- 直前の回路はPhase Frequency Discriminatorであり,Front panelのOutをサーボに入力している.富山大で作った回路なので回路図とPCBしかなく,シャーシの中身の構成は不明.
- 出力の端子がSMAなので,おそらくsingle endだと思われる.そうするとPLL X/Yのサーボは発振する.→ PLL Xは28MHzで発振,PLL Yは見当たらない?
- Phase Frequency DiscriminatorにはRear panelからDsub9ピンが出ている.この出力はAA chassisに繋がってデジタルに流れているので,おそらくdifferentialの信号を出していると思われる.
- PFD → PLL Xは1mのBNC,PFD → PLL Yは2m以上のBNC.
LIGOの状態
- LIGOではFrequency DiscriminatorはI/Q demodulatorほぼ同じ構成をしている.メインのfrequency discriminator boardの後にBreakout boardがあり,そこでTNC出力でdifferential信号を出せるようにしている.これをCommon Mode Servoに繋ぐため,発振はおそらく起こらない.
対策
- Phase Frequency Discriminatorの信号をdifferentialにしてBNC(or 2pin LEMO)でサーボに入れるようにする?
klog
klog 29503: ループアンテナでサーボ周辺を測定.28MHz16MHzのピークを確認.
klog 29568: サーボの電源を1つずつ入れてループアンテナでサーボ周辺を測定.PLLXで28MHzのピークを確認.
Summing node
現状
- ALS1 rackにインストールされている.
- 直前の回路はLSC0 rackのGr PDH X/Yであり,各サーボのSLOW OUTがsingle endでSumming nodeの入力にBNCで入っている.
- 28MHzの発振は確認できず,50MHzの大きなピークを発見.
LIGOの状態
- LIGOではALS CARMは電気ではなく光で和をとっているの状況が大きく異なる.
- LIGOにも「Summing Node」という名前の回路があり,CARMのCommon Mode Servoの直前に入っているが,中身は一般のCommon Mode Servoとは異なりBoosterなどを外した構成になっている.
- LIGOのSumming Nodeは2chある.入力はI/Q demodulatorから2つ,Frequency Discriminatorから1つ,デジタルのDACから1つの計4つで,全てdifferential endになっている.
対策
- TBD
klog
klog 29503: ループアンテナでサーボ周辺を測定.28MHz16MHzのピークを確認.
klog 29568: サーボの電源を1つずつ入れてループアンテナでサーボ周辺を測定.28MHzのピークはなく,50MHzに大きなピークがある.
CARM
現状
- ALS1 rackにインストールされている.
- 直前の回路はI/Q demodulator(IN1)とSumming node(IN2)であり,どちらもsingle endなので発振する.
- 28MHzに発振を確認
LIGOの状態
- LIGOではCARMサーボの直前はSumming Nodeの各chから来ている.
- Summing nodeのSUM出力は通常のCommon Mode Servoと同じくsingle endになっている.なので,CARMサーボの入力はどちらもsingle endである.
対策
- TBD
klog
klog 29503: ループアンテナでサーボ周辺を測定.28MHz16MHzのピークを確認.
klog 29568: サーボの電源を1つずつ入れてループアンテナでサーボ周辺を測定.28MHzのピークを確認.
FIB X/Y
現状
- ALS0 rackにインストールされている.
- 直前の回路はPSL room内のThorlabsのPDで,single endの信号がBNC出力になっている.
回路は発振していない.考えられる理由としては,ThorlabsのPDはAC電源で動くためGNDレベルはACラインからきており,入力信号のGNDがサーボのGND(±18Vの中点)とずれていることがあげられる.今後調査するべき.した
IN1/IN2のGNDと回路のGNDが絶縁されている(>1MΩ)ので発振しない.
LIGOの状態
- LIGOにはない?
対策
発振していないなら特に必要ない?
klog
klog 29503: ループアンテナでサーボ周辺を測定.目立ったピークは出なかった.
klog 29568: IN1/IN2とOUT2のGND間の抵抗を測定.1MΩ以上の抵抗値なので絶縁されていることを確認.
IMC
現状
- IOO0 rackにインストールされている.
- 直前の回路はIMC REFLの復調信号(IN1)とCARMのFast OUT(IN2).復調はMini CircuitsのpassiveなRF mixer (とLowpass FIlter)でやっている.どちらもsingle end.
- 回路は発振していないように見える.どちらもsingle endの信号で状況としては発振してもおかしくない.今後調査するべき.
LIGOの状態
- LiGOのIMCサーボの入力はI/Q demodulator(IN1)とCARMのFast OUT(IN2).IN1の方はdifferentialになっているがIN2の方はsingle endのはず.
対策
- 発振していないなら特に必要ない?
klog
klog 29503: ループアンテナでサーボ周辺を測定.目立ったピークは出なかった.
LIGOでの接続
Common Mode Servoの基本的な構造はKAGRAと変わらない(D0901781).ただし,KAGRAと違いほとんどの入力信号はdifferentialになっている(一部例外あり).
Gr PDH X/Y, PLL X/Y
LIGOのエンドステーションの配線はD1100670が詳しい.
"ALS Cavity Locking"がKAGRAでいうところのGr PDHに対応し,"ALS Laser Locking"がPLLに対応する.Gr PDHの直前の回路はI/Q demodulator,PLLの直前の回路はPhase/Frequency discriminatorになっている.
I/Q demod, PFD
LIGOのI/Q demodulatorはKAGRAのものよりも基板が追加で入っている(D1000181).I/Q demodulator本体(D0902745)はLIGOとKAGRAで共通だが,LIGOではI/Q demodulatorのdifferential output (I/Q)をDemodulator Breakout (D1000184)に接続し,フロントパネルからTNCでdifferentialな信号が出せるようになっている.
LIGOのPhase/Frequency discriminator(D1002476)はI/Q demodulatorとほとんど構造が同じで,メインの基板がI/Q demodulatorからPhase Frequency Discriminator(D1002471)に置き換わっているだけである.従って,フロントパネルからTNCでdifferentialな信号が出せるようになっている.
Summing node, CARM, IMC
センターエリアの配線はD1200666, D1900511に詳しい.
回路室での再現試験
発振の再現
Common Mode Servo (Gr PDH ver.3、坑内から持ち帰った筐体)の上方5 cmぐらいの位置にDual I&Q Demodulatorを設置、2台とも同一のDC電源から電源供給(ケーブル長~1 m)、demodulatorのI-MonとservoのIN1を1 mのBNCケーブル(+ BNC-TNCアダプタ)でつないで電源を入れ、Moku:Labにつないだ霜出さん作製のループアンテナをservoのinput付近やBNCケーブルに当てたたところ、~30 MHzぐらいの発振が見えた。
- 電源ケーブルを動かすと発振周波数や振幅が変わる。
I&Q Demodulatorの電源を切っても発振は止まらない。(電源を切っても電源GNDはつながったまま。)
- ServoのIN1につないだBNCケーブルの反対側端子のshellがdemodulatorのBNC端子のshellに触れるだけで発振は起きる。
Servo自身のchassis(10 Ωと100 nFを介して基板GNDに接続)やミミに接触しても発振。
- ServoのIN1につないだBNCケーブルの反対側端子のshellがdemodulatorのBNC端子のshellに触れるだけで発振は起きる。
50 cmのケーブルにすると発振は見えない。
ケーブル長を1.5 mにする(1 mと50 cmを中継アダプタで接続する)と周波数は下がる。
I&Q Demodulatorの電源ケーブルを長くする(数mの電源ケーブルを継ぎ足す)と発振は見えなくなる。
I&Q Demodulatorの代わりに別のCommon Mode Servo(MZI用、Gain Stageのoffset調整試験のため改造済)を設置し、Out2/Slow/FastのTNC端子とIN1/2を接続しても発振状況は変わらず。
同軸ケーブルでのDifferential信号入力
上記のセットアップでI&Q Demodulatorリアパネルの"I & Q Outputs Ch 1&2"のDsub 9ピンコネクタにDsubブレイクアウトコネクタを付けて1-6ピンをBNCブレイクアウトコネクタの芯線とシールドにそれぞれ接続、1 m BNCケーブルでCommon Mode ServoのIN1に接続してみたが、同様に発振した。
ブレイクアウトコネクタの代わりにADC用BNC-Dsub Converterを用いて、
demodulator [I&Q Outputs Ch1&2] <= Dsub 9-pin cable (50 cm/1 m) => [to ADC Ch1-4] Dsub-BNC Converter [Single Inputs Ch1] <= BNC cable (1 m) => [IN1] servo
- のようにつないだが、同様に発振した。
Dsub 9-pin cableを10 mの物に取り換えると発振は見えなくなった。
シールド付多芯ケーブルでの接続
2芯ケーブルは無かったが3芯のシールド付ケーブルがあったので、上記のDsubブレイクアウトコネクタを使ってI&Q Demodulatorの"I&Q Outputs Ch1&2"の1-6ピンを2芯に、残りの1芯とシールドをGNDに接続し、反対側はBNCブレイクアウトコネクタを用いてCommon Mode ServoのIN1の芯線とshellにdemodulatorの1-6ピン、残りの線とシールドはOUT2 TNC端子のshell (servoのGND)に接続したところ、発振は見えなかった。
同様にBNCブレイクアウトコネクタで2台のCommon Mode ServoのSlow出力のTNC端子の芯線とshellを3芯のうち2本に、残りをSlow出力のlemo端子のshell (基板GNDと10 Ω/100 nFで接続)につなぎ、反対側をもう1台のservoのIN2入力のTNC端子とlemo端子に同様に接続したところ、発振は見えなかった。
フェライトコア(クランプフィルター)の取付
ケーブルに高周波のノイズが乗っているなら、と以下3種類のフェライトコアのクランプフィルターを購入してBNCケーブルに付けてみた。
BNCケーブル(1 m)にフェライトコアを装着することで30 MHz付近の発振は見られなくなった。
参考
Meeting
TBU
Reference
LIGO Circuits
- Common Mode Servo
- Common Mode Summing Node
- I/Q Demodulator
- Phase Frequency Discriminator
LIGO Wiring
- Center Station
(OBSOLETE) Vertex ISC Electronics Cable Layout 1ページ目が比較的見やすい
O4 ISC/SQZ Wiring Diagram for Corner Station 最新版だがわかりにくい
- End Station