LCGT 大方針会議 議事録
日時: 2009年 11月 10日 午後2時~6時
場所: 宇宙線研柏 大セミナー室
参加者: 三代木、森脇、中谷、大橋、神田、高橋竜太郎、齋藤芳男、麻生、長野、高橋弘毅、佐藤、安東、三尾、中村、川村、宗宮、鈴木、苔山、宮川、山本博章、黒田
筆記: 森脇
決定事項:
- 7年後の LCGT の目標は従来の LCGT の概算要求通りとする.
- 「5年後に RSE を入れて 150Mpc 見えるものを作る.かつ,低温化の部品を揃える.半低温をどうするか」等を,大橋氏が検討グループの座長を務めてまとめる.
議事: - 概算要求へ向けた対策会議 (黒田):
- この会議に先立ち,LCGT協議会の主要メンバーによる概算要求へ向けた対策会議を 13時から開いた.(LCGT協議会は,宇宙線研・天文台・KEK の長の覚書に基づいて開かれるもの)
- 梶田所長に LCGT の director を依頼した.
- 本日の会議の趣旨確認 (中谷):
- 今日の会議の前提の再確認.
- 4-5ヵ月先に LCGT プロジェクトが始まるという条件で概算要求を考えた場合,以前の概算要求と同じ内容で出すかどうか自明ではない.
- 梶田所長をはじめとして,外部状況に詳しい方々に意見を聞き,以前と同じ枠組みで提出することになった.
- 枠の中の部分について腹をわって話をしたい.
- (1)5年で冷却系も含めて建設完了(それ以降は僅かな施設運用費しか要求できない)
- (2)その後 2年間,調整
- (3)8年目より運用に入る
- (4)世界初の重力波検出を目指す
- (5)総額 155億円
- 以上の制約下で
- (1)feasible なシナリオの設定
- (2)外部情勢の変化,計画の躓きに対し robustness を持たせる
- LCGT たたき台紹介 (宗宮):
- AdLIGO最初のサイエンスラン (S7) は 2014年 12月から,を予定.
- 感度が予定どおりなら 1週間程度で重力波検出.
- LCGT で使用予定の 30kg 良質サファイアは現状では入手困難 (2-3kg なら良質のサファイアはある).
サファイア問題を先送りしてデザインを決めていいのか?=> 折衷案として「半低温」
ETM はコーティングが20層くらいあり熱雑音の寄与が ITM より大きく,一方,透過光の品質は悪くてもよい.=>「ETM のみをサファイアにして冷却,ITM はシリカで常温」
- インスパイラルレンジを計算してみるとフル低温と半低温ではほとんど変わらない.
- 半低温の問題点: ITM で熱の問題 (熱補償, TCS) に対処する必要がある.
- 4年目に160Mpc級,6年目に 280Mpc級を実現でき,フル低温とほぼ同じ最終感度に到達できる.
- 中村:「イベントレートが 10倍, 10分の1の可能性はあるので,1週間の観測で検出と書いてあったところは,確実ではない」
- 山本:「AdLIGO S7 は 3台同時に動く予定」
- 宗宮:「AdVIRGO はサスペンションの問題が解決しているので,AdLIGO より早くいい感度になる可能性もある」
- 宗宮:「ITM, ETM ともに常温シリカの場合,雑音寄与は ETM が ITM の sqrt(2)倍で,これは膜数の比 18/9 の平方根」
- 川村:「"低温で感度を出す" と "重力波の初検出" はどちらがゴール?」
- 山本:「練習問題の構成でとれる実データを解析してみて,LIGO グループと比べて足りないものが何かを見極めることが非常に大切」
- 麻生:「低温を捨てられないというのなら、サファイアの透過性能問題を解決するには半低温しかないのではなかと思える。しかし、半低温にしてもサファイア品質以外の低温の問題は解決されないので、Feasibilityはあまり上がらない。」
- 川村「サファイアは,頑張ればできる?」
- 三尾:「現状では、十分な性能のものは入手できない。お金と時間をかけて、開発を行なわないといけない。」
- 三尾:「大型のサファイア結晶はその製造過程の問題で、C軸方向に成長できない。そのため、ただ、質の悪い結晶という問題ではない。光軸方向とC軸方向が一致しないと冷却時に、鏡の形状が軸対称でなくなり問題が生じる。そのような結晶は現実にはまだ存在しない。今の成長法を用いるなら、例えばa軸方向に成長させたものから、C軸が光軸となるように切り出さないといけないが、それで可能かどうか、現時点では情報がない。」
- ETグループでのシリコンの研究 (苔山):
- 10K にすると,機械損失と熱伝導率は,サファイアよりシリコンが良いという測定結果が紹介されていた.
- シリコンのシリケートボンディングの強度テストが Glasgow で行われ,シリカより強くつき,低温にしても強度劣化がなかったという結果であった.
- 10^-2/cm の吸収 at 1064nm.
ディレイライン利用の検討:
- ITM に二つ穴をあけて,FP の構成にする.
- 熱雑音は楽になるが,散乱光の問題が浮上するであろう.
- 大橋:「機械ロスをへらすためにコーティング膜に Ti をドーピングする、薄膜設計をλ/4からずらす、等の手法は、レーザー干渉計の根幹となっている先端光技術のノウハウを軽視していると感じている」
- 安東:「蛍石と比べると,どうか」
- フリーディスカッション:
- 三尾:「サファイアの入手が厳しいと述べたが,できないと言っているのではない.LCGTとして必要なものは、開発しないといけないのだから、予算を捻出してでも開発する。」
- 大橋:「5年目で LxGT 相当干渉計を仕上げる + 低温化の部品を揃える,が条件」
- 安東:「5年後に RSE を入れて観測すべきかどうかが決断の分かれ目になるのでは」
- 神田:「5年目に その時点でのLIGO(S7)に比肩し得る感度になっているデザインにすることが重要。(「比肩し得る」=観測レンジで7~8割、イベント期待値で 1/2~1/3程度か。1桁が落ちては比較にならない)」
- 川村:「モチベーションを保って仕事を進める目的で,イベント検出できる確率が 50% ほしい」
- 三尾:「7年後に ETM だけ冷えているというのはゴールとして ok ?」
- 黒田:「5年後に 150Mpc 見えるものを作る方針を今回の決定としたい」
- 黒田:「first detection をする = 一年間に 1イベントのレートの干渉計をいち早く作る,と考えている」
- 安東:「GWICが解析結果の公表をコントロールする点については周知のとおりだが、LCGTのデータをどの程度オープンにするかという点について議論をして欲しい」
- 黒田:「データの取扱いに関する国際的取り決めを行う上で、LCGT予算化が認められない限り、MOUを担う母体として認知されない」
- 神田:「LCGT は他グループに最終的にはフルデータを公開する予定.公開のための前処理にマンパワーが必要なので,取れてすぐ公開できるとは限らない.」